小麦

パンの材料・リーン系とリッチ系ってなに?

パンは何でできてますか?という問いに「小麦粉」と答えるのはもちろん正解ですが、正確に知っておくと更にパンを選ぶ楽しさも増えるでしょう。例えば、パンを膨らませているのはベーキングパウダーではありませんよね。強力粉と薄力粉の違いは?イーストってなんなの?

このように、正確なことは意外と知らない人が多いのです。パンには主材料と副材料があり、どれを使うかによって大きく二種類に分けることができます。

 

リーン系とリッチ系

パンの主材料というのは、パン作りに欠かせない

水、粉、塩、酵母の4つのことです。

副材料は主材料の他に味わいに甘みやコクといったバリエーションを持たせるために加えられるもので

主に油脂、卵、牛乳、砂糖の4つです。

主材料だけで作られたシンプルなパンが「リーン系」。食パンやフランスパンなどが代表格。

副材料を加えたバリエーション豊かなパンが「リッチ系」と呼ばれ、デニッシュ生地やペストリーなどはこれにあたります。

リーン系は素材の旨味だけを味わえるのが特徴で、淡白に思われがちですが製法によってクラムやクラストの味わいは異なります。フランスパンを例にとっても、バゲットとバタール、ドゥ・リーブルでそれぞれ硬さや香ばしさの食感は変わってくるのがわかると思います。「リーン」は「素朴な」という意味があり、小麦そのものの味わいを楽しめるパンです。

一方でリッチ系にはバターの風味や砂糖の甘さを加えることができ、牛乳による香り付けや焼き上がりの色付けも期待できます。現在売られている多くの菓子パンはこのリッチ系で、おやつの菓子パン、お昼の惣菜パンなどお店によって様々な工夫をこらしたユニークなものが楽しめるのが特徴です。

それぞれの材料について簡単にまとめてみましょう。

 

水(主材料)

水は小麦粉を溶かして混ぜるために必要な水分であり、小麦に含まれるグルテンを引き出す役割があります。加えてパン酵母は弱酸性の環境で発酵するためアルカリ性の水は向いていません。

カルシウムやマグネシウムの含有量を表す硬度については、50〜120ppmという数値がパン作りには適しているとされています。あまり高度が高い、つまりカルシウムの比率が多いとグルテンが切れてしまい生地が繋がりにくく、乾燥して硬い感じになります。逆に軟水ですとベタベタして重い生地になります。一般的な水道水の硬度は10〜100の間が飲料水として適しているとされているため、それほど大きく逸脱した数字にはなっていないでしょう。少なくともホームベーカリーで水道水を使ったせいで失敗、ということは私はありません。

 

 

小麦

粉(主材料)

パン作りでは主に小麦粉が使われることはご存知かと思いますが、ライ麦パンや米粉、とうもろこしの粉をアクセントで使うこともあります。

「小麦粉」

小麦粉には小麦タンパクという独自の成分が含まれており、含有量によって粉の種類が分かれます。普通はパン作りには小麦タンパクを多く含む強力粉を使いますが、ホームベーカリーでは薄力粉を使用することが多いようです。

小麦タンパクの仕事は水で練られて「グルテン」を形成すること。このグルテンが網の目のように大きく張り出すことによってパンをふくらませることができるのです。グルテンが弱いと膨らみが弱くなりますし、強すぎて切れてしまうとボソボソとした食感になってしまいます。小麦タンパクの織り出すグルテンこそがパンの命とも言えるでしょう。

この2つの他にも、強力粉よりもタンパクの多い超強力粉や、準強力粉に当たるフランスパン粉、小麦の粒をまるごと挽いた全粒粉があります。全粒粉はビスケットなどのお菓子でおなじみですね。薄力粉はマフィンやケーキなどのさっくりとした食感を活かすお菓子作りで主に使われます。

ライ麦パン

「ライ麦粉」

色が茶色で小麦と同じようなタンパク質を持つライ麦ですが、大きく違うのはグルテンを出さないことです。そのためライ麦パンの焼き上がりは大きく膨らむのではなく、密度の高いずっしりとしたものです。

このライ麦だけでパンを焼くこともできますし、小麦粉に1割弱混ぜることで保湿性を高め、焼き上がりのしっとりとした食感を増やすこともできます。さらにクラストに固めの食感をアクセントとしてつけるのにも役立ちます。

もう一つの特徴としては栄養価の高さが挙げられます。ライ麦パンの多くは副材料を使わないリーン系なのでカロリーも低く、ミネラルや食物繊維を豊富に含み、一般的な菓子パンよりもヘルシーな自然食と言えるでしょう。

 

 

塩

塩(主材料)

調味料としての役割が多い塩ですが、パン作りにおいてはグルテンを引き締めて生地のコシを強くしてくれる効果があります。入れないとダレてしまい膨らみが弱く、逆に入れすぎると酵母の発酵を阻害してしまいます。一般的に精製塩を使いますが、生地に対して2%程度が目安です。

 

パン酵母(主材料)

酵母全般に関してはここでひとまとめにできないくらい広い分野なのですが、今回はパン酵母について絞って調べました。

酵母とは、自然界全体に住んでいる生き物で、空気、水、穀物、その他様々なものの中に住んでいます。それらが一定の温度などの条件が整うと「発酵」を始め、状態を変化させます。有名なのがアルコール発酵で、これは糖分をアルコールに変える働きがあり、ビールやワインといったお酒の醸造に利用されています。

しかし、空気中の酵母は気温や湿度によって大きく変化するため、安定した製品づくりができないという難点がありました。そこで研究が進み、科学的に必要な酵母だけを取り出して増やすことになったのです。この中でもパン作りに必要な酵母だけを集めたものが「パン酵母」と呼ばれ、イーストという形で製品化されています。

ではなぜパン酵母はパンを膨らませてくれるのか?

酵母は適度な湿気と温度、栄養が揃った時に増えて発酵します。小麦に含まれるデンプンやショ糖を分解し、その際にアルコールと炭酸ガスを発生させます。炭酸ガスは最初小さな気泡ですが、小麦から出るグルテンに包まれて温度の上昇とともに大きく膨らんでゆきます。これによりパンは膨らむのです。酵母が生きている間、炭酸ガスは発生を続け、オーブンに入れたあとも発酵はしばらく続きます。

 

市販のパン酵母

自然界の酵母の中から、パン作りに必要な酵母だけを取り出したものがイーストです。

イーストの原型と言える生イーストは用途が広く、砂糖が多い菓子パンにも有効に作用します。低温でも活動できるという長所を持っていて、生地を冷蔵で寝かせたい時には最適です。日持ちがしないので二週間程度で使い切る必要があります。

半年ほど保存が可能なのがドライイースト。粒上にして乾燥させたもので、生イーストよりも水分が少ないので日持ちがします。使用するときにはぬるま湯で戻す必要があります。甘みのあるパンづくりには向かないので、菓子パンよりはフランスパンなどのシンプルなパンに向いているでしょう。

ドライイーストを加工して更に使いやすくしたのがインスタントドライイースト。ドライイーストよりも更に細かい粒状で、ぬるま湯で戻す必要もないので簡単です。加糖用と無糖用があるので目的によって使い分ければどんな種類のパンでも使えます。

 

天然酵母

パンに必要な菌だけを取り出したイーストと違い、自然界の酵母には乳酸菌など様々な種類のものが雑多に混じっています。発酵には時間がかかり管理にも難しさがありますが、独特の風味が出るためにあえて天然酵母にこだわる職人もいます。人工的に酵母を加工する技術が発明されるまでは、この天然酵母がうまく作用してくれるかどうかを運に任せて作る難しさがありました。

ヨーグルトから取れる酵母や、ビールの原料となるホップの酵母もパン作りに使うことがあります。

 

注意:ベーキングパウダーや重曹は炭酸ガスを発生させて膨らみますが、発酵によるものではありません。生地を発酵させる手間が必要ないためにいくつかの菓子パンや、お菓子作りの時には酵母ではなくこれらが役に立ちます。

 

以上がパンを作る際に必要な主材料です。たった4つの主材料でも厳選することで様々な味わいのパンを作り出すことができますし、パンの種類によって使い分ける重要性がわかることと思います。

料理に詳しい方でないとなかなか触れる機会のないイーストですが、なぜかわからないけど適当に混ぜてるよ、という方も酵母のことを知るほどにパン作りが楽しくなるでしょう。

少し長くなりましたので、卵や牛乳などの副材料に関しては次の記事で書きたいと思います。